そのT部長は、午後から都合があるらしく、朝の早い時間だったが説明したいと言っていた。
そもそも、夜型人間の私は、普通だったら朝のこんな早い時間には起きてはいないのだが、8日間も入院していたら病院の日課に適合してしまって、21:00には眠くなり6:00には目を覚ますような生活パターンになっていた。


ナースステーションに行くと、前日に撮ったMRIの画像が明るく光るボードに掛けてあった。
その部長がどのような言葉で説明してくれたか、あまり覚えていない。


分かったのは、頭の輪切り写真の中央よりもやや右よりに2cmぐらいの白い部分がくっきりと写っていたことだった。それが腫瘍だと説明された。あまりにもくっきり写っていて、それは右側にしかなかったので、明らかに異物でることは、素人の私でも理解することができた。


その時、医者には以下を教えられた。
(1)それが聴神経腫瘍というもので悪性ではない
(2)大きくなる速度は非常に遅く2cmぐらいの場合、10年以上かかって大きくなったのかもしれない
(3)こうなると耳鼻咽喉科の所掌ではなく、脳神経外科の所掌である
(4)これまでの治療は、突発性難聴のための治療だったので、聴神経治療にはまったく効果はない
(5)10万人に1人ぐらいの割合でなるらしい


何をどう理解していいのか分からずボーっとしていると、T部長が
「とにかく、これ以上の話は、脳外科の先生から話を直接聞いた方がいいね。」と言った。私が、
「うん、そうですね。」と言うと、
「不安だろうから、なるべく早い方がいいでしょう?」と聞いてくる。
「そうですね、よろしくお願いします。」と答えた。すると、T部長は、電話を取り出し、同じ病院の脳神経外科に電話をし、
「聴神経腫瘍の患者さんなんだけど、今からいいかな?」と尋ねた。
電話の相手は、10:00からならば空いていると言うような回答をしたようである。
「この写真(MRIの画像)を持って10:00に脳神経外科の、TJ先生を訪ねてみてくれる。」と言って、告知は終わりました。


しばらく、ボーっとしていた。7:30ぐらいだったと思う。


女房は毎日、午後ぐらいにお見舞いに来ていた。
お見舞いといっても、私の退屈しのぎのために、トランプや、花札や、モノポリなどを持ってきて、一緒に遊んでいただけだった。
お見舞いでも駐車場の料金が取られるので、午後だけの見舞いに来てくれていた。

ふと気付いて、女房に電話した。腫瘍らしいこと、これから脳神経外科に聞きに行くことを説明した。特に病院に来てほしいとは伝えなかった。


自分のベッドで休んでいると、看護師が来て、
「今から脳外科のTJ先生が時間が空くということですが、行きますか?」と聞かれた。
特にすることもないので、
「はい、行きます。」と回答した。
そのまま看護師に案内されて、脳神経外科に行った。